1.処分の概要
関東財務局は、保険代理店大手の株式会社FPパートナー(本社:東京都文京区)に対し、保険業法第306条に基づく業務改善命令を発出。
主な目的は、顧客保護の徹底と経営管理態勢の抜本的な見直し。
2.命令の主な内容
FPパートナーに対し、以下の改善を命令。
-
経営責任の明確化
処分を踏まえ、経営陣の責任範囲を明確にする。 -
保険募集管理態勢の再構築
顧客本位の観点から、保険会社との関係性を見直し、適切な管理態勢を整備。 -
顧客対応態勢の確立
保険業法に定める「情報提供義務」「意向把握・確認義務」を確実に実施できる仕組みを構築。 -
法令遵守態勢の強化
不適切な募集行為を防止するためのコンプライアンス体制を整備。 -
経営管理(ガバナンス)の抜本的強化
取締役会など経営レベルで改善を監督する仕組みを再構築。
さらに、社外取締役・監査役から経営課題や改善状況について意見を提出させること、
また令和7年10月6日までに改善計画を提出・即時実行することが求められている。
進捗報告は半年ごとに関東財務局へ提出し、その概要をホームページで公表する義務もある。
3.処分理由の概要
関東財務局による立入検査の結果、FPパートナーにおいて以下の問題が確認された。
(1) 管理態勢の不備
FPパートナーは全国174拠点・約2,500人の募集人を抱える業界最大級の訪問型保険代理店。
しかし、保険募集人が顧客意向を正しく把握しているか確認できる態勢が整っていなかった。
(2) 推奨商品の偏り
推奨商品の選定において、顧客ニーズよりも保険会社からの便宜供与(支援金や取引条件)を重視していた。
そのため、特定の保険会社を優先的に推奨する傾向が見られた。
(3) 不適切な募集行為
顧客の希望と異なる商品(例:収入保障を希望→変額保険を提案)を勧める事例が多数発生。
結果として、顧客の適切な商品選択機会を阻害していた可能性が高い。
(4) ガバナンスの欠如
経営陣が推奨販売に伴うリスクを十分に認識しておらず、
監査役からの指摘にも1年以上対応していなかった。
4.金融庁の判断
これらの問題は、乗合代理店や生命保険業界全体の信頼を損なうものと判断。
FPパートナーに対し、経営主導での再発防止策とガバナンス再構築を求めた。
【追加詳細】
不適切な推奨販売と法令遵守態勢の欠如(同文書内後半)
1.ビジネスモデル上の問題点
FPパートナーは、推奨販売を軸とした代理店運営を行っていたが、
推奨商品の選定基準が「経営支援などの貢献度」中心となっており、
「商品優位性」「顧客への訴求力」などは十分に検討されていなかった。
また、取締役会での指摘(客観的評価を導入すべきとの意見)にも関わらず、
改善が行われず放置されていた。
2.情報提供・意向把握の不備
推奨販売に関するマニュアルやシステム面の整備がなく、
募集人が推奨理由を入力する欄すら設けられていなかった。
このため、顧客の意向を踏まえた提案かどうかを会社として検証できない状態。
医療保険では、特定の保険会社の商品だけを提案するケースが多数確認された。
3.不適切な推奨販売の実例
-
顧客が2社の比較を希望 → 両社を提示せず、別会社の商品を推奨
-
「貯蓄性保険は不要」との顧客に → ドル建て終身保険を提案し、理由説明なし
苦情2,600件超のうち、少なくとも28件が不適切販売の疑いありと確認。
4.法令違反とコンプライアンス欠如
成果連動型報酬制度のもと、募集人自身や家族の契約に対しても報酬を支払う仕組みを導入しており、
**保険料割戻し(保険業法第300条違反)**に該当。
本人契約3,775件中3,765件で違反が確認された。
さらに、多件数契約・短期乗換を行う募集人が存在するにも関わらず、
モニタリング体制が未整備で、不適切募集を把握できていなかった。
5.求められる改善
-
ビジネスモデルの見直し
便宜供与重視の姿勢を改め、顧客本位の推奨方針を策定。 -
内部管理の整備
意向把握・推奨理由の記録義務化、苦情モニタリングの強化。 -
ガバナンス体制の再構築
経営陣・社外監査役の関与を強化し、再発防止策を取締役会で定期検証。
まとめ
FPパートナーは、業界最大手としての規模を持ちながら、
顧客本位の販売や法令遵守よりも営業成果を優先した運営を行っていたと指摘された。
関東財務局は、今後の保険募集の公正確保と信頼回復に向け、
経営陣主導の抜本的な業務改善を求めている。
コメント