【保険のプロが警告】築40年超マンションの「終の棲家」リスク
―見えない亀裂は建物よりも、人と人の間に―
築30年、40年を超えるマンションが増え、老朽化が突きつける現実が目の前にあります。
いずれは「建て替え」か「取り壊し」か――その日が確実に近づいているにもかかわらず、話し合いが進まない管理組合も少なくありません。
特に理事長や役員のなり手がなく、輪番制で仕方なく引き受けているケースや、名前だけの理事長で実際には管理会社任せになっている組合も見られます。
こうした状況では、保険の契約やトラブル対応もすべて管理会社任せとなり、業者や保険会社に“良いように仕切られる”こともあります。
本来、管理組合の保険や修繕計画は住民の大切な財産に関わる問題です。
誰かが面倒を見てくれているようで、実際には誰も内容を理解していない――そんなケースが増えています。
老朽化が突きつける「三つの現実」
① 財源の枯渇
修繕積立金が国の基準に達しておらず、管理費の未払いも目立ちます。財政的な不安定さが続けば、大規模修繕の計画も立てられません。
② コミュニティの断絶
意見の対立が住民同士の不信感を生み、「もう話したくない」と関係が冷え込むケースも。管理組合が機能しなくなれば、建物の寿命よりも先に“人間関係”が崩壊します。
③ リスクの多発
構造の老朽化に加え、給排水管の劣化による水漏れ事故が頻発しています。水漏れが起きれば、補修費の負担や責任の所在をめぐって新たなトラブルに発展します。
そして何より――マンションは一生ものではないという現実が、静かに迫っています。建て替えも取り壊しも、いつかは避けて通れません。
水漏れトラブルと保険の落とし穴
管理組合の保険には、個人賠償責任保険の包括特約が付いている場合が多く、専有部分からの水漏れでも使えるケースがあります。
しかし、2~3回使えば保険料は1.5~2倍に上昇します。
さらに、誰か一人が使ったことで保険料が上がれば、「誰のせいだ」と責任を問う声が上がり、住民間の関係が悪化することもあります。
だからこそ、個人賠償責任保険は自分自身で加入しておくことが重要です。
もし自分の専有部分から水漏れを起こしてしまっても、個人契約があれば管理組合や他の住民に迷惑をかけずに済みます。
保険会社にも「できること」と「できないこと」がある
「保険でなんとかしてほしい」という声は多いですが、保険会社にも限界があります。
特に、示談交渉は本来弁護士の専任業務であり、保険会社がすべてを対応できるわけではありません。
そのため、今の時代は「弁護士費用特約」が必須です。
自動車保険についている特約には「自動車事故限定」と「日常生活対応」の2タイプがあります。
また、火災保険や傷害保険にも弁護士費用特約を付けられるので、補償範囲を確認し、複数契約しておくことが賢明です。
まずは、自分の保険証券を見直し、「個人賠償責任保険」と「弁護士費用特約」があるか確認してください。もし付いていなければ、保険会社や代理店に連絡して追加を。
新しい時代のマンション選び
築年数の経過した分譲マンションでは、いずれ「建て替え」か「取り壊し」かの選択を迫られる日が来ます。
そんな中、近年注目されているのが「定期借地権付きマンション」です。地価の高い都市部でも価格を抑えやすく、将来の建て替えや処分の見通しが立てやすいことが魅力です。
これからは、「一生住む」ではなく「一定期間、安心して住む」という考え方が主流になるかもしれません。
保険も住まいも、時代に合わせて選び直す選択肢は必要です
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