数年後、あなたの車の整備ができなくなる?!

保険屋さんのひとりごと

「車検が通らない」「修理したいのに断られる」「直すのに法外な費用がかかる」──そんな未来が、すぐそこまで来ています。これは大げさな話ではありません。日本の自動車整備業界で今、静かに、しかし確実に進行している大きな問題は、あなたの車の買い替え方や今後のカーライフそのものを大きく変える可能性を秘めています。


 

「国家資格」整備士の激減!ベテランは去り、若者は来ない本当の理由

 

車の整備は、専門知識と技術が不可欠な仕事です。しかし、今、この業界では人手不足が深刻化しています。

【現実】

  • 整備士は10年で約7000人減少し、特に未来を担う専門学校の入学者は18年で約47%も激減しています。(日本自動車整備振興会連合会「自動車整備白書」)

  • 現場では、平均年齢47.2歳と高齢化が進み、若手不足は深刻。求人倍率は全職種の4倍以上という異常事態です。(カーワク「整備士不足のリアル」、BSRweb「国土交通省 自動車整備業界の現状」)

なぜ、ここまで若者が来ないのでしょうか? その裏には、想像以上に厳しい「現場の声」があります。

【現場の声】

  • SNSには「国家一級整備士なのに手取り15万円で辞めた」「8年間スーパーブラックだった」といった、低賃金や長時間労働に疲弊した元整備士の本音が溢れています。「朝まで残業しても残業代が出なかった」という告発は、決して特別な話ではありません。

「3K」のイメージだけでなく、「働いても報われない」という絶望感が、この国家資格職の空洞化を加速させているのです。


 

数千万円の投資が「街の整備工場」を消滅させる!?見えないコストの重圧

 

近年の車の技術進化は目覚ましく、整備工場は対応に苦慮しています。

【現実】

  • 今の車はフロントガラスのカメラや、バンパーには無数のセンサーがついており、更には自動ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)を制御しています。これらを修理するには、国が定める「特定整備工場」の認証が必須なんです。

  • この認証を得るために必要な診断機やエーミング設備は、数百万どころか数千万円単位。一般的な中小の整備工場が簡単に導入できる額ではありません。

【現場の声】

  • 整備工場のオーナーからは「国が勝手に法律を厳しくして、小規模な整備工場が事業を継続できなくなった」という悲痛な叫びも聞こえてきます。(carview!「自動車整備業、2024年度は445件が『消滅』」)

  • 実際、2024年には自動車整備事業者の倒産・廃業が過去最高の400件を超える見込みです。(レスポンス、PR TIMES調査)

この「見えないコスト」が、長年地域に根差してきた「町の車屋さん」のシャッターを次々と下ろさせる原因となっているのです。


 

ディーラー・保険会社が「下請けいじめ」?儲からない構造が生む負の連鎖

 

多くの人が頼りにするディーラーでさえ、実は整備の多くを下請けに丸投げしているという実態があります。

【現実】

  • ディーラーは車検やエンジンなど一部の基幹業務以外、板金、内装修理、電装品の多くを下請けに依頼しています。

  • しかし、その下請けに対してディーラーは非常に厳しい単価で仕事を依頼する傾向にあります。自動車業界のサプライチェーンでは、下請けの1割が「全く価格転嫁できていない」状況です。(帝国データバンク調査)

【板金工場社長の証言】

  • ある板金工場の社長はこう語ります。「ディーラーは自分たちがやりたくない他社の板金、特に小さい損傷は、安い値段でうちのような末端の下請けに有無を言わさず出しています。

  • さらに「保険会社によっても工賃に格差があり、時間当たり100円~500円も違う」とも。理由を尋ねても「上げることを検討しています」と繰り返されるだけで、具体的な改善は見られないといいます。

  • 保険会社のロードサービスも請け負うことがあるそうですが、「会社によって単価が全然違う上に、現場に行くまでの料金すら出してくれないところもある」という驚くべき証言も。

この「儲からない構造」が、高額な設備投資と人材不足に苦しむ整備工場をさらに追い詰め、廃業を加速させているのです。

【専門家からの警告】

  • 事業承継を専門とする会社は、「今後5年の間で整備工場の統廃合は過去にないほど進み、今とは全く違う景色になっている可能性がある」と、強い懸念を表明しています。


 

もうすぐ、あなたの車が「路頭に迷う」かもしれない…!消費者必見の対策

 

これらの複合的な問題がこのまま進めば、数年後には「修理できる工場が見つからない」「直してもらうまでに何週間もかかる」「修理費が高額すぎて手が出せない」といった事態が現実になります。特に、公共交通機関が限られる地方都市では車が生活の足であるため、この問題は「生活停止」に直結しかねません。

現にSNSでは、「車検まであと1ヶ月なのに、どこの工場も予約でいっぱいで焦ってる」「事故修理、見積もりすら2週間待ちってどういうこと?」といった、ユーザーの悲鳴にも似た声が上がっています。オイル交換やタイヤ交換でさえ、数週間待ちが当たり前になりつつあるのです。

では、これから車の買い替えを考えている人、そして愛車を長く乗り続けたい人は、どう対応すればよいのでしょうか?

  1. 古い車の維持は困難に: 現状を考えると、年式の古い車を今後も維持していくのは、ますます難しくなる可能性が高いでしょう。予期せぬ故障のリスク、部品調達の困難さ、そして対応できる整備工場の減少が大きな壁となります。愛着のある車でも、将来的な整備の困難さを考慮せざるを得ないかもしれません。

  2. 「車検・整備込みのリース車両」を真剣に検討する: 月々の費用に車検や基本的なメンテナンスが含まれるリース車両は、高額な突発出費の心配がなく、常に新しい車に乗れるため、整備の負担をリース会社に任せられます。予測可能な費用で、最新の安全装備の車を維持できる安心感は計り知れません。

  3. 「かかりつけ」整備工場の確保と関係性強化: 今からでも、信頼できる整備工場を見つけ、良好な関係を築いておくことが非常に重要です。いざという時に優先的に対応してもらえるような「顔見知り」の工場があるか否かで、状況は大きく変わるでしょう。

     

  4. 任意保険は「万全」に、ロードサービス・JAFも必須に: 車の整備環境が悪化する未来において、万が一の事態に備えるための保険とロードサービスは、これまで以上に重要になります。

    • 任意保険は「万全」にしておく: 車両保険は当然として、高額な修理費用に対応できるよう、補償範囲や金額を十分に確認しましょう。特に、自然災害による損害(雹害、浸水など)もカバーする内容か、見直しておくことを強くお勧めします。数百円、数千円の違いで、いざという時に何十万円も掛かる「安心」を買うという視点が必要です。

    • 代車費用(レンタカー特約)は「長期タイプ」で加入を: かつては整備工場から代車が出るのが一般的でしたが、整備期間の長期化や工場の経営圧迫により、もはや無償の代車が出してもらえない時代になりつつあります。板金工場の社長の証言からも、その厳しさが伺えます。もし車が動かせなくなったら、レンタカーを自己手配・自己負担する覚悟が必要です。特約は30日以上の長期タイプを選びましょう。

    • ロードサービスは「必須」: 自動車保険に付帯のサービスに加え、JAF(日本自動車連盟)のような専門のロードサービスへの加入を強く推奨します。保険会社のロードサービスは今後縮小又は条件が厳しくなります。バッテリー上がりやパンクだけでなく、レッカー移動や積載車の手配、さらに整備工場が見つからない場合の橋渡しなど、手厚いサポートは大きな安心につながります。

あなたの愛車を守り、安心してカーライフを送るためにも、この自動車整備に関する大問題は、決して他人事ではありません。車の選び方、乗り方、そして整備との向き合い方を見直す時期が来ています。

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