1. 処分の概要
東海財務局は、株式会社ネクステージ(本社:愛知県名古屋市)に対し、保険業法第306条に基づく業務改善命令を出した。
これは、ネクステージが関与する自動車保険における不正請求疑義事案および保険募集管理上の不備が複数確認されたためである。
2. 命令の主な内容
(1) 調査・原因分析の実施
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過去に確認された疑義事案全体について、全容把握と真因分析を行うこと。
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その上で、経営責任の所在を明確にする。
(2) 体制強化
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顧客保護・コンプライアンス重視の組織風土を醸成
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適切な保険募集管理体制の整備
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苦情管理・顧客情報管理態勢の確立
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これらを定着させるため、ガバナンス体制の抜本的強化
(3) 提出・実行義務
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改善計画を令和7年9月8日までに提出し、直ちに実行
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3か月ごとの進捗報告を翌月15日までに提出(初回報告基準日:令和7年12月末)
3. 処分の理由・問題点
3.1 自主調査・内部統制の不備
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経営陣は自主調査に関して議論せず、整備本部に任せきり。
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整備本部の調査は客観性を欠き、証拠の記録が不十分。
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調査期間や対象を限定し、疑義の高い案件を除外してしまっていた。
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不正疑義を把握しながら、全体的な再調査や再発防止策を設計していなかった。
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少なくとも47件の疑義事案を把握していたが、顧客対応・調査指示を行っていなかった。
3.2 ガバナンス・経営管理体制の欠如
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取締役会および経営陣は、保険事業を軽視。非公式ミーティングで重要判断を行う例があり、議論機会が限られていた。
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内部統制(3線管理)体制が不十分で、監査部門も保険リスクに対応できていなかった。
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保険事業に精通した人材配置がなされておらず、モニタリング・監査が機能していなかった。
3.3 保険募集管理の欠陥
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募集人教育が形式的・未熟で、重要事項説明や推奨理由の説明が不徹底。
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推奨保険会社・商品の選定基準が不透明で、経営会議で検討されず一部役員の判断で決定されていた。
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店舗レベルでは、推奨理由説明と異なる方針の推奨をしており、合理的説明が不十分。
3.4 個人情報管理・苦情対応の不備
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個人情報保護に関するガイドライン認知がなく、安全管理措置を未実施。
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CS向上推進室を設置したものの、苦情対応に関与せず機能不全。
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顧客相談室・保険課も十分な機能を果たしていなかった。
4. 東海財務局の判断
これらの実態は、保険募集管理義務・体制整備義務違反に該当すると判断され、業務改善命令を発出。
特に、不正請求リスクが未然に防止できておらず、疑義事案も放置されていた点が重く見られた。
5. 今後の対応と課題
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ネクステージは、改善計画に基づき、経営責任の明確化・募集・苦情・情報管理体制の整備・ガバナンス改革を行う必要がある。
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東海財務局は、定期報告を通じて改善の進捗を監督する方針。
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経営層の関与と調査の実効化が鍵となる。
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